
高校総体が終わる時期は、高校3年生にとって大きな節目になります。
これまで部活中心の生活を送ってきたお子さまにとって、総体は高校生活の大きな区切りです。毎日の練習、遠征、大会、仲間との時間。そのすべてに全力で向き合ってきたからこそ、総体が終わった直後は、気持ちも体も一度ゆるみやすくなります。
保護者の方の中にも、
「総体が終わったら、本当に受験勉強に切り替えられるのだろうか」
「6月、7月から始めて間に合うのだろうか」
「本人は大丈夫と言っているけれど、家ではあまり勉強しているように見えない」
このような不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
実は、高校総体後の過ごし方は、大学受験においてとても大切です。
なぜなら、この時期に受験勉強へうまく切り替えられるかどうかで、夏休み以降の伸び方が大きく変わってくるからです。
総体後、多くの受験生が一度立ち止まる
高校総体が終わると、すぐに受験勉強に向かえる生徒ばかりではありません。
むしろ、多くの生徒が一度立ち止まります。
部活が終わった安心感。
これまで張りつめていた気持ちが切れたような疲れ。
急に時間ができたのに、何から始めればいいか分からない戸惑い。
模試の結果を見て、志望校との差を感じる不安。
こうした気持ちが重なり、思ったように動き出せないことがあります。
保護者の方から見ると、
「部活が終わったのに、なぜ勉強しないのだろう」
「もう受験生なのに、まだ危機感が足りないのではないか」
と感じるかもしれません。
しかし、お子さま本人も何も考えていないわけではありません。
むしろ、内心では焦っていることも多いです。
ただ、その焦りをどう行動に変えればよいのか分からない。何から手をつければよいのか分からない。だから結果的に、スマホを見たり、だらだら過ごしたりしてしまうことがあります。
つまり、総体後に必要なのは、ただ「勉強しなさい」と声をかけることではありません。
必要なのは、受験勉強に向けて動き出せる状態を作ることです。
部活を頑張ってきたことは受験にとってマイナスではない
保護者の方の中には、
「部活を頑張りすぎて、勉強が遅れてしまったのではないか」
と心配される方もいると思います。
確かに、部活をしていた分、勉強時間が十分に取れなかった科目や単元はあるかもしれません。
しかし、部活を最後まで頑張った経験は、決して受験にとってマイナスだけではありません。
部活を通して身につけた力は、受験勉強でも大きな武器になります。
毎日練習を続ける力。
苦しい時期でも踏ん張る力。
目標に向けて努力する力。
本番に向けて調整する力。
最後までやり切る力。
これらは、大学受験においても非常に大切な力です。
受験勉強は、短期間だけ頑張ればよいものではありません。毎日の積み重ねが必要です。模試で思うような結果が出ない時期もあります。勉強しているのに成績がすぐには伸びない時期もあります。
そのようなときに、部活で培った粘り強さは大きな支えになります。
だからこそ、保護者の方には、
「部活ばかりしていたから遅れた」
という見方ではなく、
「部活で身につけた力を、これから受験に向けて使っていく時期」
と捉えていただきたいと思います。
この見方の違いは、お子さまへの声かけにも大きく影響します。
総体後に差がつくのは、才能ではなく切り替えの早さ
総体後に一番差がつくのは、もともとの才能ではありません。
差がつきやすいのは、切り替えの早さです。
もちろん、これまでの学力差はあります。しかし、総体後の時期にどれだけ早く受験モードに入れるかによって、夏休み以降の勉強の質が変わってきます。
例えば、総体後すぐに現状を整理できた生徒は、夏休み前からやるべきことが明確になります。
どの科目を優先するのか。
どの単元を復習するのか。
共通テスト対策と二次試験対策をどう進めるのか。
学校の授業、課題、模試をどう活用するのか。
このような方針が決まっている状態で夏休みに入ることができれば、夏の勉強はかなり充実します。
一方で、総体後に何となく過ごしてしまうと、あっという間に夏休みが近づいてきます。
そして夏休みに入ってから、
「そろそろ本気でやらないと」
「でも、何から始めればいいのか分からない」
という状態になってしまうと、せっかくの夏休みをうまく使いきれない可能性があります。
大学受験において、夏休みは大切です。
しかし、夏休みに頑張るためには、夏休み前の準備が必要です。
総体後から夏休み前までの期間は、受験勉強の土台を作る大事な時期なのです。
いきなり長時間勉強を始める必要はない
総体後、保護者の方はどうしても勉強時間が気になると思います。
「何時間勉強しているのか」
「家で机に向かっているのか」
「スマホばかり見ていないか」
こうした点が気になるのは当然です。
ただ、総体後にまず大切なのは、いきなり長時間勉強を始めることではありません。
大切なのは、今やるべきことを整理することです。
受験勉強は、ただ時間をかければよいわけではありません。特に高校3年生のこの時期は、残された時間が限られています。だからこそ、何を優先するかが非常に重要になります。
今の成績で足りない科目は何か。
志望校に必要な科目は何か。
配点が高い科目はどれか。
苦手だけれど、伸びしろが大きい科目はどれか。
夏までに固めるべき単元はどこか。
今の参考書を続けるべきか、やり方を変えるべきか。
こうした整理をしないまま勉強を始めると、頑張っているのに結果につながりにくくなります。
逆に、やるべきことが明確になれば、勉強時間が少しずつ増えていきます。本人も「これをやればいい」と分かるため、行動に移しやすくなります。
保護者の方が見るべきなのは、最初から勉強時間だけではありません。
お子さまが、何をやるべきか分かっているか。
志望校までの距離を理解しているか。
夏までの方針が決まっているか。
ここを確認することが大切です。
高校総体後にまずやるべき3つのこと
総体後に受験勉強へ切り替えるためには、まず次の3つを整理することが大切です。
1 志望校との距離を知る
最初に必要なのは、現在地を知ることです。
志望校に合格するためには、どの科目でどのくらい点数が必要なのか。現在の模試の結果と比べて、どのくらい差があるのか。
ここを曖昧にしたまま勉強を始めると、何となく不安なまま勉強することになります。
反対に、志望校との距離が見えると、今やるべきことも見えやすくなります。
例えば、英語の基礎がまだ弱いのか。数学の特定単元で大きく失点しているのか。理科や社会の暗記が遅れているのか。国語の読解に課題があるのか。
課題が見えれば、対策も具体的になります。
2 科目ごとの優先順位を決める
次に大切なのは、科目ごとの優先順位です。
受験生は、やるべきことが多すぎて不安になります。
英単語もやらないといけない。
数学の復習も必要。
古文単語も覚えないといけない。
理科や社会も始めないといけない。
模試の復習もしないといけない。
こうなると、何から手をつければよいか分からなくなります。
だからこそ、優先順位を決めることが必要です。
すべてを同じ重さで進めようとすると、結局どれも中途半端になってしまうことがあります。
志望校の配点、本人の得意不得意、残り期間を踏まえて、今一番やるべきことを決める必要があります。
3 夏までの学習計画を作る
3つ目は、夏までの学習計画を作ることです。
ここで大切なのは、完璧な計画を作ることではありません。
今週何をするのか。
6月中に何を終わらせるのか。
7月までにどの単元を固めるのか。
夏休みに入る前に、どの状態まで持っていくのか。
このように、近い期間の行動を具体的にすることが大切です。
受験勉強は、遠い目標だけでは動きにくいものです。
「志望校合格」という大きな目標を、今週やること、今日やることに落とし込むことで、初めて行動につながります。
保護者がやってはいけない声かけ
総体後は、保護者の方も不安になりやすい時期です。
そのため、つい強い言葉をかけたくなることもあると思います。
「もう部活は終わったんだから勉強しなさい」
「今まで遅れているんだから、もっとやらないと」
「そんな勉強時間で間に合うの」
「スマホばかり見ていて大丈夫なの」
このような言葉をかけたくなる気持ちは、とてもよく分かります。
しかし、お子さま本人が焦りを感じている場合、こうした声かけは逆効果になることがあります。
責められているように感じると、かえって勉強の話を避けるようになることがあります。親に成績や模試の結果を見せたくなくなることもあります。
総体後に大切なのは、親子で対立することではありません。
お子さまが受験に向き合えるように、落ち着いて現状を整理することです。
おすすめの声かけは、
「総体まで本当によく頑張ったね」
「ここから受験に向けて、何から始めるか一緒に整理しようか」
「今の成績と志望校を見て、優先順位を考えてみよう」
「一人で考えるのが難しければ、先生に相談してみよう」
このような言葉です。
まず部活を頑張ったことを認める。
そのうえで、次に向かうための整理をする。
この順番が大切です。
保護者ができる一番のサポート
保護者の方ができる一番のサポートは、勉強を直接管理することだけではありません。
もちろん、生活リズムを整えることや、学習環境を整えることも大切です。
しかし、高校生の場合、親が細かく勉強内容まで管理しすぎると、本人の反発につながることもあります。
保護者の方に意識していただきたいのは、次の3つです。
まず、感情的に責めないこと。
次に、現状を一緒に整理する姿勢を持つこと。
そして、必要であれば第三者に相談することです。
大学受験は、科目数も多く、入試方式も複雑です。共通テスト、二次試験、私立大学、推薦入試など、必要な対策は志望校によって変わります。
保護者の方だけで判断しようとすると、不安が大きくなることもあります。
また、お子さまも親には素直に話せなくても、先生や第三者には本音を話せることがあります。
「何から始めればいいか分からない」
「本当は志望校に間に合うか不安」
「模試の結果が悪くて焦っている」
こうした本音を整理する場があるだけで、受験勉強への切り替えはしやすくなります。
総体後の数週間をどう過ごすかで、夏が変わる
高校総体後から夏休みまでの数週間は、見落とされがちですが、とても大切な期間です。
この時期に何となく過ごしてしまうと、夏休みに入ってから慌てることになります。
一方で、この時期に現在地を整理し、優先順位を決め、夏までの計画を作ることができれば、夏休みの勉強は大きく変わります。
夏休みは長いようで、実際にはあっという間です。
学校の補習、模試、課題、オープンキャンパス、生活リズムの乱れ。思っている以上に自由に使える時間は限られています。
だからこそ、夏休みに入ってから考えるのではなく、夏休み前に準備しておくことが大切です。
総体後は、受験勉強を本格的に始めるための準備期間です。
ここでうまく切り替えられた生徒は、夏以降に大きく伸びる可能性があります。
まとめ
高校総体後は、大学受験に向けた大きな分かれ道です。
部活を最後まで頑張ったお子さまほど、総体後は一度気持ちがゆるみやすくなります。しかし、それは決して悪いことではありません。それだけ本気で部活に向き合ってきた証拠でもあります。
大切なのは、そこからどのように受験勉強へ切り替えるかです。
いきなり長時間勉強を始める必要はありません。
まずは、志望校との距離を知ること。
科目ごとの優先順位を決めること。
夏までの学習計画を作ること。
この3つを整理するだけで、受験勉強は大きく進みやすくなります。
保護者の方は、焦りからお子さまを責めるのではなく、部活を頑張ったことを認めたうえで、次の一歩を一緒に考えてあげてください。
総体後の切り替えは、大学受験のスタートラインです。
ここで正しい方向に一歩踏み出せるかどうかが、夏以降の伸び方を大きく左右します。
総体後、何から始めればよいか不安な方は、まずは現在地と志望校までの距離を整理することから始めてみてください。

